伝統工芸高岡銅器振興協同組合

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WORKS活動実績

法隆寺 釈迦三尊像の再現事業

伝統工芸高岡銅器振興協同組合は、高岡市、南砺市、東京藝術大学、井波彫刻協同組合の連携チーム一員として、平成27年度から28年度にかけて、法隆寺国宝釈迦三尊像*1を原寸大に完全再現する「法隆寺釈迦三尊像再現プロジェクト」に参加しました。これは、東京藝術大学の伊東順二特任教授がプロジェクトデザインし、当組合の鋳物技術(蝋型主体とした鋳物技術等)と現代の技術(3Dデータから作られた原型の活用等)を使い、門外不出と言われる国宝法隆寺釈迦三尊像を原寸大かつ、緻密に完全再現し展示した事業です。

日本語と英語併記のパンフレットはこちら Click here for both Japanese and English pamphlets.

 

事業の一環として、再現された法隆寺釈迦三尊像の展覧会を開催しました。
展覧会 法隆寺 再現 釈迦三尊像展 〜飛鳥が告げる未来〜
開催期間:2017年3月10日(金)〜20日(月・祝)
開催場所:ウイングウイング高岡4Fホール(富山県高岡市末広町1番7号)
総合監修:宮廻正明(東京藝術大学教授)
キュレーター:伊東順二(東京藝術大学社会連携センター特任教授)
空間構成:横山天心(富山大学芸術文化学部准教授)

 

国宝法隆寺釈迦三尊像のレプリカ

国宝法隆寺釈迦三尊像のレプリカ
国宝法隆寺釈迦三尊像のレプリカ

*1:国宝法隆寺釈迦三尊像は、中尊、左右脇侍の三尊からなる止利様式の仏像です。日本仏教彫刻史の初頭を飾る名作として知られ、図式的な衣文の処理、杏仁形(アーモンド形)の目、アルカイックスマイル(古式の微笑)、太い耳朶、首に三道を刻まない点など、後世の日本の仏像と異なった様式を示し、大陸風が顕著に表れています。
三尊は背後に舟形光背を背負っています。宣字座と称される上下二段構成の箱形の木造台座上に釈迦如来が坐し、その左右に脇侍像が侍立しています。
一光三尊の金銅像として日本で最も古い様式、また最も完具した仏像で、飛鳥彫刻の代表作とされています。

 

「国宝仏の再現に挑む〜法隆寺釈迦三尊像と高岡・井波の職人たち〜」

●日本語版/Japanese version

●英語版/English version

 

「国宝仏の再現に挑むⅡ〜飛鳥が告げる未来〜」

●日本語版/Japanese version

●英語版/English version

 

再現工程

以下に、当組合が関連する工程を紹介します。

 

〔1〕計測・解析、原型作成

東京藝術大学COI拠点

法隆寺、文化庁より特別に許可を得て、計測・解析を行い、樹脂製の原型を制作しました。

1.3D計測 3D Measurement

プロジェクターから縞パターンを投影し、2台のCCDデジタルカメラで撮影することにより、高精度な3Dデータを作成しました。計測した3Dデータを解析し、データが取得できなかった部分についてはデジタルモデリングシステムにて3D復元を行いました。

[3次元計測撮影回数]239回

[3次元計測撮影回数]239回 (c)東京藝術大学COI拠点

 

2.データ解析・造形 Data Analysis & 3D Modeling

計測した3Dデータを解析し、データが取得できなかった部分についてはデジタルモデリングシステムにて3D復元を行いました。

3D計測・データ解析

3D計測・データ解析 (c)東京藝術大学COI拠点

データ造形

データ造形 (c)東京藝術大学COI拠点

3D造形ソフトで3D彫刻

3D造形ソフトで3D彫刻 (c)東京藝術大学COI拠点

 

3.3D造形出力 3DPrinting

編集した3Dデータを3Dプリンタで出力し、鋳造原型を造形しました。

3Dデータをもとに制作した中尊の樹脂製の原型

3Dデータをもとに制作した中尊の樹脂製の原型 (c)東京藝術大学COI拠点

 

4.金属分析 MetalAnalysisoftheOriginalBronzeStatues

蛍光X線分析調査により釈迦三尊像の金属分析を行い、銅、錫、鉛の他、水銀などが微量検出されました。

[使用機器]
Thermo Fisher Scientific社製
Thermo-NITON 携帯型成分分析計 XL3t-900S-M
[測定条件]
X線管球ターゲットAg、Mining Mode Cu/Znおよび
Metal Modeにより対象元素を切り替えて測定、コリメーター8㎜φ

 

 

〔2〕鋳造

伝統工芸高岡銅器振興協同組合

東京藝術大学提供の原型を基に、中尊脇侍、光背を鋳造しました。

1.鋳型作成 Casting Mold Making

3Dプリントによって制作された原型をもとに、鋳造用の型を作成しました。

 

ーロストワックス型鋳造法

中尊、両脇侍およびその光背はこの製法で鋳造しました。

①原型をもとにシリコンゴムで外型をつくる。
②ゴム型の中にロウを流し、ロウで鋳物と同じ肉厚の型をつくる。
③ロウを耐火性のあるスラリー(泥漿)に浸して乾燥させ(10回程度繰り返す)、外型をつくる。
④これを加熱して脱ロウする。(脱ロウによりできた空間が鋳物になる)

3Dの樹脂型から中尊のロウ型をつくる。

ロウ型を砂でかたどった状態。

複雑な造形箇所は、大小の型に分割し、組み立てて鋳型にする。

大光背の裏側の鋳型をクレーンで運び、表側と合わせる。

 

ーガス型鋳造法

中尊の大光背はこの製法で鋳造しました。

①原型を鋳物砂で覆い、炭酸ガスを注入し、硬化させ鋳型をつくる。
②鋳型から原型を外し、耐火度を高めるための塗型剤を全面に塗る。
③分割した型を(今回は大小300個程度の型)を組み込んだ表側の鋳型、裏側の鋳型を正確に合わせる。

 

2.溶解 Metal Melting

銅合金(ブロンズ)を約1250℃に溶かします。

 

3.注湯(ちゅうとう) Metal Pouring

溶かした銅合金を湯口から注ぎ込みます。

鋳型を焼いて加熱する(右脇侍)。

湯口より注湯(右脇侍)。

4つの湯口から注湯するタイミングは熟練した職人の勘所(大光背)。

 

4.型ばらし Mold Cracking

注湯した銅合金が冷えてから鋳型を取り除きます。

鋳型を金槌で割りながら鋳物を取り出す(左脇侍)。

クレーンで大光背をつり上げ、この後表面に残る鋳物砂などを取り除く。

 

 

〔3〕御像の仕上げ

伝統工芸高岡銅器振興協同組合

大光背の背に銘を掘りました。

東京藝術大学COI拠点

鋳造した御像の造形を仕上げ、古色風に表面処理を施しました。

1.大光背銘 Inscription on the Great Halo

大光背から複写した銘を、再現した大光背に印刷し、彫金の技法で一文字ずつ彫りました。

スクリーン印刷の技法で銘を印刷。

文字の「はらい」や「とめ」は、当時の書体に合わせた。

 

2.3D積層痕の除去 Removing the Surface Ripples of 3D Layers

3Dプリンターの積層痕を、キサゲと特注のこてヤスリを用いて除去しました。

3D積層痕 (c)東京藝術大学COI拠点

3D積層痕の除去 (c)東京藝術大学COI拠点

 

3.表面仕上げ Surface Finishing

制作工程で生じた形の緩みをキサゲ、タガネ、特注のこてヤスリで修正し、造仏当時の姿を甦らせました。

表面仕上げ1 (c)東京藝術大学COI拠点

表面仕上げ2 (c)東京藝術大学COI拠点

 

4.構造検討 Position Setting Up

中尊、脇侍、光背をつなぐ枘(ほぞ)を制作し、仮組みを行いながら全体のバランスを検討しました。

仮組み1 (c)東京藝術大学COI拠点

仮組み2 (c)東京藝術大学COI拠点

 

5.古色仕上げ Finishing with Aged Color

鍍金(ときん)、硫化着色、緑青着色などを用いて経年の古色を再現しました。

硫化着色 (c)東京藝術大学COI拠点

 

 

◉東京藝術大学
東京藝術大学は、その前身である東京美術学校、東京音楽学校の創立以来130年間、幾多の優れた芸術家ならびに教育者、研究者を輩出するとともに、文化財の保護と継承にも努めてまいりました。2010年には、連綿と受け継がれてきた模写や模刻の伝統技術を礎に、現代のデジタル技術を融合させ、文化財の高精度かつ同素材同質感で複製・再現する技術を開発しました。新たに立ち上げた同学COI拠点では、芸術と科学技術を統合した高精度な文化財複製「クローン文化財」を制作し、流出または消失した世界中の文化財を復元することを目指しています。

東京藝術大学COI拠点
法隆寺、文化庁より特別に許可を得て、計測・解析を行い、樹脂製の原型を制作しました。
画像:(c)東京藝術大学COI拠点